タイピンの歴史 History of Tie Clips

 ネクタイは17世紀後半にクロアチアの兵士が首に巻いていた布が起源だ、という話は有名である。また日本にネクタイを持ち込んだのは、1851年に帰国したジョン万次郎だと言われている。しかし、ネクタイピンの歴史はほとんど知られていない。記録もほとんどない。

 下の出典(英語)に因れば、現在の形のネクタイは1850年以前に普及しており、1870年ごろまでにはネクタイピンが使われ始めたという。ただし、ピンタイプなのでシルク製のネクタイに穴が開いてしまう問題があり、1920年ごろまでには、はさむタイプのタイクリップも使われるようになったという。この記事はアメリカ人が書いたようなので、アメリカでの話なのだろうと思われる。ただし、この記事の根拠がどこかがわからないので、確認が取れない。誰が最初に使い始めたか、とか、どこが最初に作ったかもわからない。(出典:http://www.slate.com/id/2167134?nav=tap3 by Paul Devlin。)WikipediaもこのWebを出典として記事を書いている。

 タイクリップが1920年ごろというのは、以下のWebにも書かれているが、これにも元の出典はかかれていない。これによれば、アメリカでは1930年代以降にはタイクリップは政治家や企業では普通に使われるものになっていたという。それに対してイギリスでは実用的なものとされ、アメリカのようにロゴを入れたものなどは受け入れられてはいなかったという。(出典:http://www.mensflair.com/style-advice/the-return-of-the-tie-clip.php By Andrew Watson。)

 ほかにも歴史に言及している英語のWebは存在するが、どれも上記のような情報のみで、それ以上の情報は見つからなかったし、そのいずれも、元となった出典が書かれているものはなかった。

 下記によれば、タイクリップ式のものは、「出自や登場した年代は分かりませんが、1920年以前からありました」とかかれており、出典として「エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典」を挙げているので、この情報は確度が高そうですし、その一方で重くて分厚い専門の百科事典でもこの程度の情報しか載っていないようです。(出典:http://allabout.co.jp/gm/gc/377421/:倉野 路凡氏による情報)

 日本に関しては、「日本装身具史」(美術出版社、2008年)という本の104ページによれば、ジョセフ・ヒコ(浜田彦蔵)の自伝に、1851年にダイヤの入ったネクタイピンをもらったことが書かれているという。確かに、「アメリカ彦蔵」(吉村昭著、新潮文庫)はこの自伝を元とした作品で、その75ページに、1851年の2月にサンフランシスコでネクタイピン3本ほかをもらったと書かれている。ただし、どのようなものかは不明だし、それを日本に持って帰ったかどうかも書かれていない。また、この本の解説にも書かれているが、著者によれば、元となった自伝には年代や人名の取り違いなど日記に誤記が多いのだそうで、どこまで信用できるかわからない。上記の資料と比べると、少し早すぎる気もするが、当然場所によって普及した時期は違うだろうから、あながち間違いともいえないだろうと思う。

 また同じ「日本装身具史」の125ページには、大正から昭和初期にネクタイピンが日本で流行したとの記述があるが、これが刺すタイプなのかはさむタイプかは明確には書かれていない。

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